スポーツ外傷 わかりやすく効果的な治療を提案します。

スポーツ外傷
足

足部におけるスポーツ外傷障害は発生頻度が高く、膝の靱帯損傷ほど重症ではないために放置されたり、 不適切な治療が行われたりすることがあります。 その結果、痛みが持続して、スポーツ活動の中止を余儀無くされることがしばしばあります。

  1. アキレス腱滑液包炎 アキレス腱とかかとに、歩行時・運動時に痛みが生じます。 治療は痛み止め、湿布をおこない、靴が足に合っていない場合には靴を交換します。 また足底板という装具で治療します。 効果がなければ注射をおこなう場合もあります。 お薬を飲む治療も行われます。
  2. 外脛骨障害(内くるぶしの下方の骨) 外脛骨は約15%の人に存在する骨で、その障害は10歳から13歳ぐらいによくおこります。 足の内くるぶしの下方が痛み、腫れ・熱感を症状とします。 治療は痛み止めのお薬・湿布をおこない、靴が足に合っていない場合には靴を交換します。 扁平足の方に多い障害なので、足底板という装具による治療もします。 効果がなければ注射を行う場合もあります。 また歩き方、立ち方の指導が有効です。
  3. 舟状骨(足の甲の骨)骨折 長時間の運動、特に長距離走の選手におきます。 治療は運動の中止とギプスによる固定を1ヶ月程度行います。
  4. 中足骨疲労骨折 長時間の運動、特に長距離走の選手におきます。 中足骨におこる疲労骨折です。 やはり運動の中止と、痛みの激しい場合にはギプスによる固定を行うこともあります。
  5. Jones骨折 足の小指の過労性の骨折を言います。 スポーツ選手に多い骨折で、偽関節を生じやすく、治りにくいです。 運動時に痛みが強く、日常は少ないのが特徴です。 初期にはギプスによる固定で良くなりますが、手術的に治療する場合もあります。
  6. 種子骨障害 種子骨は母趾の足底側にある小さな骨です。 そこに直接ぶつけたり、無理な力がかかったりして骨折や炎症を生じると、母趾を曲げたときに痛みがでます。 骨折の場合には1ヶ月の固定、それ以外は足底板、注射による治療が有効です。
  7. 腓骨筋腱亜脱臼 スポーツレベルにもよりますが保存的治療よりも注射が望ましいです。
  8. 足底筋膜炎 足のアーチを保持してる筋膜に炎症・断裂が生じます。 陸上競技の長距離選手に多いです。 安静、ストレッチ足底板、炎症痛み止めの注射が有効です。 走り方、歩き方の指導も重要です。
  9. 足根洞症候群 足関節捻挫後に足首に痛みが残る場合、その部位へ行く神経に障害が生じていることがあります。 リハビリや注射が有効なことが多いです。

足の障害は、走り方・体重のかけ方・立ち方に問題があると生じます。
治療・予防に有効な体操の仕方も指導いたしますので、興味のある方はお問い合わせください。

肩

スポーツの怪我からくる肩の障害は発生頻度が高く、また種目によってさまざまな特殊性があります。 膝の靱帯損傷ほど重症ではないために放置されたり、不適切な治療を行った結果、 痛みが持続してスポーツ活動の中止を余儀無くされることがしばしばあります。

  1. 肩鎖関節脱臼 脱臼によるずれの少ない患者さんでは、保存的に治療される場合が多いです。 ずれが大きい場合にはスポーツ活動の種類、レベルによっては手術が検討される場合もあります。
  2. 肩関節脱臼 肩関節は人体でもっとも脱臼がおこりやすい部位です。 骨折を伴うことが多いため、元に戻ったとしても必ずレントゲンによる確認を行います。 最低でも4週間の固定が必要です。 若年者は再発しやすく、瀕回の脱臼は手術による治療も検討されます。
  3. インピンジメント症候群 ゴルフ・水泳・テニスなどで肩の骨や靱帯が動く時に、すれて痛みがおきます。 治療はリハビリや注射で行います。
  4. 鎖骨骨折 ラグビー・柔道などで多くおきます。 ほとんどが保存的に装具で治療できますが、神経・血管の圧迫があるときや、 あまりにおおきなずれがあるときには手術で治療する場合もあります。
  5. 腱板損傷 この障害がおこると、腕を横にあげたり前にあげたりするのが困難になります。 完全断裂(完全に切れてしまう)と不完全断裂にわけられます。 90%は保存療法でよくなりますが完全断裂の場合のみ手術で腱の縫合を行います。
手関節

手首のスポーツ外傷は、転倒などによりおこる怪我と、動作の繰り返しによりおこる障害にわけられます。 怪我を治すためには、安静からリハビリへ移行するタイミングが重要です。

  1. 骨折 手関節の骨折はよくおきますが、ほとんどが4~6週のギブス固定でよくなります。 関節面に骨折を認めたり、ずれがひどい人は手術で固定することもあります。 手術後リハビリで1ヶ月程度動かす訓練をします。
  2. 手根骨の骨折 手関節をそらせて転んでしまったときなどに多い骨折です。 捻挫と間違えられて骨がつかないままに放置されることが多いです。 早めであればギブス固定でよくなりますが、スポーツ選手であれば手術治療が望ましいです。
  3. 軟骨損傷 手首には比較的広い軟骨面があり、そのおかげで安定しています。 そこに生じた怪我はなかなか痛みが消えず、長期化します。 レントゲンではわかりませんがMRIや造影の検査でわかります。 治療は3ヶ月程度の固定を行います。手術で治療する場合もあります。
  4. 手関節不安定症 手首の中の骨がずれて、骨をつないでいる靱帯が切れる障害です。 捻挫とまちがわれて見逃されることが多く、専門医以外では発見が難しいです。
  5. 腱脱臼 手首の痛みの中には、腱の脱臼によるものもあります。 特に棒を使うスポーツに見られ、小指側に痛みが生じます。 テーピングで良くなることが多いですが、手術が必要になる場合もまれにあります。
  6. 靱帯損傷 レントゲン検査を行い、明らかに不安定性が認められれば手術治療をすすめます。 そうでなければ固定治療を行い、その後、動かす訓練をします。
指

手指のスポーツ外傷はさまざまなスポーツでおきますが、単なる捻挫ですまされ、 その後機能に障害が残る(癖になる)ことが多い部位です。 たとえば指が捻挫すればひっぱる治療がよいといわれてきましたが、はたして骨折なのか靱帯損傷なのか、 骨折にしてもどれくらいのものかを評価せずにひっぱるのは大変に危険です。

  1. 突き指(マレットフィンガー) 球技による突き指で生じます。 受傷当初は変形が軽く痛みも少ないため放置されることがあり、その結果、関節変形が残ることがあります。 レントゲンで骨折の有無を確認し、骨折がないか、あっても骨片が小さければ、6週間の固定、 骨片が大きければ手術を必要とします。
  2. 関節内骨折 指の骨のつなぎ目の中に骨折がある場合、骨片が小さくずれがなければ固定で治療します。 骨片が大きくずれがあれば、手術を必要とします。
  3. 関節靱帯損傷 骨と骨のつなぎ目の靱帯に怪我した場合、新鮮不全断裂であれば3週固定後、 3週テーピングをして動かす訓練を行います。 新鮮完全断裂であれば、本格的なスポーツ選手のみ、手術が望ましいかもしれません。
  4. 母指の捻挫(尺側側副靱帯損傷) 親指が無理に捻られて生じます。 靱帯が付着部よりはがれ、腫れが強く、出血があり、加えてぐらつきが強ければ、 レントゲンで損傷の程度を判断し、損傷がひどければ手術、そうでなければギブス固定を行います。
膝

膝は、大きな力がかかることより外傷、障害が生じやすく、 またスポーツによる使い過ぎで障害がおこることも多いです。 膝の障害は男性よりも女性に多く、女性スポーツ選手の10人に1人以上が障害を持つといわれています。

靱帯損傷

  1. 前十字靱帯損傷 バスケットボールやバレーボールなどの種目において着地・急停止・方向転換の動作の時など、 特に接触をしないでも損傷することが多いです。 接触型の損傷は柔道やラグビーなどでみられ、半月板損傷や靱帯損傷を伴うことが多いです。 診断は診察・レントゲン・MRIでされます。
    靱帯損傷の急性期の治療についてはまず「安静」「冷やす」「圧迫固定」「患部を高く挙げる事」を行います(RICE)。 その後は怪我の程度により保存療法・手術療法が選択されます。 保存療法は日常生活、スポーツ時に不安定性を自覚しない、または半月板損傷を認めない場合にすすめられます。 基本的に前十字靱帯損傷は保存療法では十分に修復されないので、 医師と良く相談のうえ、手術を行うことも多いです。
  2. 後十字靱帯損傷 ラグビー・アメフト・柔道で多いです。 下腿に前面よりタックルされて、けがを生じます。 急性期の治療についてはまず「安静」「冷やす」「圧迫固定」「患部を高く挙げる事」を行います(RICE)。 筋力増強を含むリハビリテーションで治療します。
  3. 内側側副靱帯損傷 膝の靱帯損傷では最も多い怪我です。 他の靱帯や半月板の損傷がおきていないか十分に検討することが重要です。
    治療には「安静」「冷やす」「圧迫固定」「患部を高く挙げる事」を行います(RICE)。
    腫れや痛みが軽ければ包帯固定で治療しますが、靱帯損傷がひどければ その後ギブスシーネ固定が必要なことも多いです。
    痛みを感じないからといって、靱帯が治るまえに固定をはずすのは好ましくありません。 固定をはずすことにより靱帯は弛んだままとなり、捻挫を繰り返す原因になるからです。 ほとんどの場合、4週程度の固定期間が必要です。 その後動かす訓練、筋力増強訓練のリハビリを行います。
  4. 半月板損傷 靱帯損傷に伴い半月板という膝のクッションに傷が入ります。 軽い場合には固定安静で良くなりますが、傷がひどい場合に手術で切除したり縫合します。

骨折

靱帯のみならず、力の程度によっては骨折を伴う場合があります。 多くの場合はギブスの固定で良くなりますが、骨のずれが認められれば手術で治療します。 6~8週程度の固定期間が必要なことがほとんどです。 ギブス除去後リハビリを行います。

障害

  1. オスグット病 成長期に膝の下がはれる病気です。 スポーツ選手に大変多く見られます。 大腿筋の緊張が高いのが特徴です。 治療はストレッチを主体としてリハビリで冷やしたり、装具での治療を行います。 練習を休む、走り方、立ち方の指導もします。
  2. ジヤンパー膝 膝の腱の炎症です。 膝の骨と靱帯のついてる部位の炎症です。 治療はストレッチを主体としてリハビリで冷やします。
  3. 膝の脱臼、亜脱臼 女性や中学生・高校生に多いです。 もともとの骨の形に異常が認められる場合が多く、筋力トレーニングで改善します。 まれに手術が必要な選手もいます。
  4. タナ障害 膝の中にある「ひだ」が突然挟まったりして痛みが生じます。 膝の使い過ぎでもおきます。 ほとんどの患者さんは安静・シップ・注射で治療すれば良くなります。
  5. 分裂膝蓋骨 膝の上方外側におきます。 リハビリで冷やして治療されますが、痛みが長引けば手術で治療する場合もあります。
  6. 離断性骨軟骨炎 大腿骨の関節面の軟骨に損傷がおきて軟骨が剥がれます。 MRIで部位を確認し、大きい場合には手術で治療する場合もあります。
  7. 靱帯炎 膝の外側で靱帯がすれることによりおこります。 長距離選手に多く、リハビリ、ストレッチで治療します。
足関節

あらゆるスポーツ種目において、最も怪我の多い部位は、足首です。 足首の骨は「ほぞ」の構造をとり、特殊な骨の形と靱帯により、関節の安定性が得られています。 足首はスポーツ中、いろいろな方向から力がかかり、その力が大きければ、靱帯や骨が損傷され、 怪我や障害となります。

外傷

  1. 靱帯損傷 日本全国で1日10000件がおきていると推測されます。
    足関節(足首)の捻挫のほとんどは、内がえしをして受傷し、外側靱帯という箇所を損傷します(特に前距腓靱帯)。 ひどい場合には他の靱帯損傷も伴い、骨折をおこす事もあります。
    靱帯損傷の急性期の治療については、「安静」「冷やす」「圧迫固定」「患部を高く挙げる事」を行います(RICE)。 その後は怪我の程度により包帯固定、装具固定、ギプス固定を行います。 腫れがおさまり痛みが軽減したら、早期にリハビリを行います。
    痛みを感じないからといって、靱帯が治るまえに固定をはずすのは好ましくありません。 固定をはずすことにより靱帯は弛んだままとなり、捻挫を繰り返す原因になるからです。 ほとんどの場合、3~6週程度の固定期間が必要です。 癖にならないように治療します。
    捻挫後2~3ヶ月経過しても完全に回復しない場合は、何らかの合併症の可能性があります。
  2. 骨折 足首の捻挫のみならず、力の程度によっては足首の骨折を伴う場合があります。 多くの場合はギブスの固定で良くなりますが、骨のずれが大きい時には手術で治療します。 6~8週程度の固定期間が必要なことがほとんどです。 ギブス除去後、リハビリを行います。

障害

  1. 慢性足関節不安定症 足関節(足首)捻挫後、不安定さが残り、 腓骨筋(ひこつきん:膝から足首まで走っている筋肉)の機能不良が加わる事により生じます。 リハビリで筋力強化運動を行いますが、ひどい不安定性を認めるときには手術で治療する場合もあります。
  2. フットボーラーズ アンクル 足首が繰り返し過度に動かされて起きます。 特にサッカー選手に多いため、この病名がついています。 骨に増殖性の変化が認められます。保存的に治療します。
  3. 離断性骨軟骨炎 足関節(足首)捻挫の際、強い外力のため、足首の関節の中にある「距骨」と呼ばれる骨の1部が、 軟骨とともに欠けた場合に生じます。 足の捻挫の1~2%に生じます。 欠けた骨が大きければ、手術により治療する場合もあります。